SONY DVP-NS715P
DVP-NS500Pの後継機種で、ノイズシェイプドDAC搭載で、安価にもかかわらず高画質との定評があった機種です。今回オークションで入手して測定してみました。
画質に影響する設定は BNR:切、画質調整:スタンダード、デジタルビデオエンハンサー:切 で測定しています。
コンポジット出力

出力レベルはコンポジットが2%、コンポーネントが5%程度大きくなっていました。この機種は内部の半固定ボリュームでレベル調整できるので、調整後測定しています。
改良SMPTEカラーバーをみると104%は出ていますが、PLUGEの-4%が-2%程度でクリップしているのが判ります。それ以外は良好な波形ですが、輝度、クロマともごくわずかなオーバーシュートが見られます。
クロマ位相についても、正確ですが、わずかにジッタが存在します。−I、Q信号も問題ありません。

ステアステップで等諧調性をチェックします。
5Stepの波形を見ると立ち上がり部分にわずかにリンキングが見られますが問題ないレベルです。
次にフルスケールのランプ波形ですが、下が-2%付近でクリップしています。上はすべて出力されています。
変調ステアステップ、変調ランプについても-2%以下のクリップ以外は問題ありません。

スイープ信号で輝度信号の帯域をチェックします。
左が水平スイープ、右が垂直スイープ波形です。5MHzまでフラットに出ています。エイリアスは5.6MHz付近から発生しています。広帯域といえます。

同じくクロマサブキャリアの帯域を調べます。左がI軸方向、右がQ軸方向の水平スイープです。大変帯域が広く、コンポーネント信号をフィルタリングせずに変調しています。Sビデオ出力は良いとして、コンポジットの場合はY/C分離で問題が発生しそうです。ソース映像に周波数の高い色信号が含まれているとドット妨害が発生するかもしれません。

インパルス応答です。上のピークはほぼ出ています。下は右(後)が大きくなっています。これはステップのオーバーシュートと同じく、アナログフィルタの影響でしょうか。補間フィルタは15タップ以上(補間前で)のものが使用されています。

クロマステアステップのベクトル波形ですが、DVP-NS500Pと同じくU軸(水平方向の両側のスポットが内側にずれています。これはCb,Crが16-240でクリップ(頭打ち)されていること示します。

その他の信号も測定してみましたが、わずかなオーバーシュートを除けば優秀な波形です。NTC7コンポジット12.5Tパルスの輝度とサブキャリアのピーク位置は少しずれています。
コンポーネント出力 インターレース

改良SMPTEカラーバーおよび水平スイープをみると輝度(Y)についてはコンポジット信号と同様の傾向ですが、より帯域が広くなっており、ステップ部分のオーバーシュートも小さくなっています。ポストフィルタの特性が少し違うようです。

がCb、下がCr、左が水平スイープ、右が垂直スイープです。Cbは0.5〜-0.5でクリップしていますが、中域にかけてゲインが大きくなっています。これは補完フィルタによる効果と思われますので、クリップはDACではなく補完フィルタの前で発生していることになります。Crを見ると-3db帯域は2.2MHz程度で3MHz付近にヌルポイントがあります。エイリアスは見られませんが、水平スイープを見るとエンベロープがでこぼこしています。これはフィルタのタップ数が少ないためと思われます。

インパルス応答を見ます。上下ともレベルが低くなっています。タップ数は7タップでしょうか。

その他の伝達特性をチェックする信号です。Sin(X)/Xの両側の振動がサプレスされています。これはちょうど3MHz付近にヌルポイントがあるためです。ステップ部分にやや大きめのオーバーシュートとリンキングが発生しています。この影響はコンポジットのサブキャリアのリンキングにも出ています。
コンポーネント出力 プログレッシブ

輝度についてはインターレースと同様の傾向です。周波数が高い分高域の減衰が大きくなっていますが、これは波形モニタの帯域のせいかもしれません。

Cbはインターレース同様クリップするので、Crのスイープを観測します。左が水平スイープ、右が垂直スイープ波形です。こちらはインターレース時よりきれいに補間され、帯域も広くなっています。-3db帯域は2.7MHz(周波数自体はその倍)程度で、エイリアスは見られません。

Crのインパルス応答を見ます。11〜13タップのフィルタが使用されているように見えます。上下ともレベルが少し小さくなっています。

その他の伝達特性をチェックする信号です。Sin(X)/X(拡大図)もレベルは少し小さくなっていますが、きれいな形をしています。
オーディオ アナログ出力

オーディオについてはごく基本的な信号のみ収録していますのでS/N(ノイズ)、歪率、周波数特性等の基本的な特性をチェックします。
計測結果を拡大するにはサムネイルをクリックしてください。文中のリンクはリファレンス波形へのリンクです

残留ノイズ、S/Nをチェックします。
左上がシステムメニュー表示時で、水平周波数(約
15.7KHz)が-130db程度混入するだけでノイズフロアは-140db程度と優秀です。(6KHzと12KHzにもわずかなピークがありますが外部からの影響の可能性もあります)
右上は無音(1KHz、-120db、16bit)再生時で100Hz以下が少し盛り上がり、水平周波数の混入が-120dbと大きくなります。これは映像信号の違いによると思われます。下は1KHz、-120db、24bitですが、信号ははっきりと識別できますが、300Hz以下でレベルが上昇します。

歪率をチェックします。左側が16bit、右側が24bit、上段が-10db、下段が-90db、周波数はいずれも1KHzです。
全体に優秀な結果ですが、-10db、24bitの結果を見ると、2次ひずみが-115db(信号比-105db)程度出ています。-10db、16bitにも量子化ノイズ(奇数次)に加えて偶数次のひずみが見られます。

周波数特性をチェックします。左がリニアスープをピークホールドしたもの、右がホワイトノイズを平均(300パス)したものです。いずれもわずかにハイ落ちの特性です。
測定する際の注意
オーディオ S/PDIF出力

1kHz、-10dbの左が16bit、右が24bitです。24bitでも出力されているのは上位16bitのようです。左右で多少高調波の出方が異なっているのは24bitの下位8bitを単純に切り捨てているためと思われます。

総評としては、評判どおりの良好な画質/音質といえます。インターレース時のコンポーネントCr、Cbのフィルタ幅が狭いのが残念です。コンポジットのサブキャリアの帯域が広すぎるのは、視聴用としては多少問題ですが、信号源として使用する場合はかえって都合が良いかもしれません。

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